指数平滑移動平均線(EMA)のおすすめ設定や利用方法をわかりやすく解説
この記事では、テクニカル分析の中でも指数平滑移動平均線(EMA)について解説していきます
「指数平滑移動平均線(EMA)って何?」
「他の移動平均線とどう違うの?」
移動平均線には複数種類があり、指数平滑移動平均線(EMA)はその中でも、最も頻繁に利用されている移動平均線の1つです。
この記事では、指数平滑移動平均線(EMA)に関する、以下の4つについて解説していきます。
- 指数平滑移動平均線(EMA)とは
- 指数平滑移動平均線(EMA)でおすすめの期間設定
- 指数平滑移動平均線(EMA)のオススメの使い方
- 指数平滑移動平均線(EMA)のメリット&デメリット
移動平均線に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
≫移動平均線のおすすめ設定を取引スタイル・手法別に紹介!注意点も解説
指数平滑移動平均線(EMA)とは
指数平滑移動平均線(EMA)とは、単純移動平均線(SMA)よりも、「敏感にトレンドを察知できるように」設計された移動平均線です。
ここでは指数平滑移動平均線(EMA)の基本情報について詳しく解説していきます。
- 指数平滑移動平均線(EMA)の計算式
- 指数平滑移動平均線(EMA)の特徴
- 指数平滑移動平均線(EMA)以外の移動平均線
指数平滑移動平均線(EMA)の計算式
指数平滑移動平均線(EMA)の計算式は以下のように表すことができます。
指数平滑移動平均線(EMA)={直近の終値×2+1つ前のEMAの値×(期間-1)}÷(期間+1)
ただし、最初のEMAはSMAと同じ値をとります。
例えば3日EMAの場合は、以下のような計算式になります。
3日EMA=(直近の終値×2+1日前のEMAの値×2)÷4
時間 | 終値 | 3SMA | 3EMA |
---|---|---|---|
4つ前 | 104 | ー | ー |
3つ前 | 105 | ー | ー |
2つ前 | 103 | (104+105+103)/3=104 | (104+105+103)/3=104 |
1つ前 | 101 | (105+103+101)/3=103 | (101×2+104×2)/4=102.5 |
直近 | 105 | (103+101+105)/3=103 | (105×2+102.5×2)/4=103.75 |
以上の表は、単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)の計算方法と計算結果を表したものです。
以上を見てわかるように、指数平滑移動平均線(EMA)の方がより、直近の終値に近い値を算出します。
単純移動平均線については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
≫【テクニカル分析】単純移動平均線(SMA)とは?利用方法をわかりやすく徹底解説
指数平滑移動平均線(EMA)の特徴
計算式を見ることで、指数平滑移動平均線(EMA)の特徴を理解することができます。
指数平滑移動平均線(EMA)={直近の終値×2+1つ前のEMAの値×(期間-1)}÷(期間+1)
まず、指数平滑移動平均線(EMA)は直近の終値を2倍することで、直近の終値を色濃く反映することができます。
加えて、指数平滑移動平均線(EMA)は計算のたびに、前回のEMAの値を参照します。その前のEMAも同様に、前回のEMAの値を参照します。
つまり、直近の指数平滑移動平均線(EMA)では、今までのすべての終値を参照することができています。
一方で、単純移動平均線(SMA)の計算式は、
単純移動平均線(SMA)=(現在の終値+1本前の終値+2本前の終値…+期間-1本前の終値)/期間
以上のようになります。
例えば3日単純移動平均線(SMA)は
3日単純移動平均線(SMA)=(現在の終値+1日前の終値+2日前の終値)/3
で求めることができますが、3日前以前の終値は計算に含まれていません。
このように、指数平滑移動平均線(EMA)には、
- 過去全ての終値を参照している
- 直近の終値を重要視している
以上2つの特徴があることが分かります。
指数平滑移動平均線(EMA)以外の移動平均線
指数平滑移動平均線(EMA)以外にも、
- 単純移動平均線(SMA)
- 加重移動平均線(WMA)
以上のような移動平均線が存在します。
また、指数平滑移動平均線(EMA)から派生して生まれたテクニカル指標として、同じくトレンド系のMACDがあります。
指数平滑移動平均線(EMA)でおすすめの期間設定
指数平滑移動平均線(EMA)でオススメの期間設定は以下の通りです。
短期 | 中期 | 長期 |
---|---|---|
5,10,15,20,21,25 | 50,75,90 | 100,200 |
移動平均線はトレンド系のテクニカル指標なので、主にトレンドを見極めるために使用します。
短期から中期のトレンドでトレードしたい場合は、短期や中期の期間を設定した指数平滑移動平均線(EMA)を使うようにしましょう。
長期のトレンドでトレードしたい場合は、長期の期間を設定した指数平滑移動平均線(EMA)を使うようにしましょう。
指数平滑移動平均線(EMA)の期間設定に関する注意点
移動平均線の期間設定には絶対的なものはないことを理解する必要があります。そもそも適切な期間は市場の特性や取引戦略によって異なります。
例えば、短期の期間設定は近い値動きに敏感に反応しますが、ノイズを多く含む可能性があります。一方、長期の期間設定は滑らかな動きを示しますが、トレンドの変化を遅れて反映する場合があります。
最適な期間を見つけるためには、バックテストを通してさまざまな期間での移動平均線を試し、どの期間が過去のトレンドに対して最も適していたかを検証します。
≫【重要】トレード手法を過去検証する方法をポイントと共に解説
しかし、過剰最適化(カーブフィッティング)にも注意が必要です。
過去のデータに対して最適な期間設定を見つけることはできても、未来の市場動向を正確に予測することは難しいため、過度に最適化された戦略は未知の状況に対してうまく機能しない場合があります。
したがって、最適な期間を見つけるためには慎重なバランスが必要です。過去のデータを参考にしつつも、将来の市場変動にも対応できる堅実な期間設定を選択することが重要です。
指数平滑移動平均線(EMA)のオススメの使い方
では次に指数平滑移動平均線(EMA)のオススメの使い方を解説していきます。
- ゴールデンクロス・デッドクロス
- 支持線・抵抗線として使用する順張り手法
- RSIを使った逆張り手法
ゴールデンクロス・デッドクロス
指数平滑移動平均線(EMA)を使った買い/売りシグナルとして、ゴールデンクロス・デッドクロスがあります。
ゴールデンクロスとは、短期の指数平滑移動平均線(EMA)が長期の指数平滑移動平均線(EMA)を下から上に交差することで、買いシグナルとして利用されます。
≫【テクニカル分析】移動平均線のゴールデンクロスを徹底解説!
デッドクロスとは、短期の指数平滑移動平均線(EMA)が長期の指数平滑移動平均線(EMA)を上から下に交差することで、売りシグナルとして利用されます。
支持線・抵抗線として使用する順張り手法
指数平滑移動平均線(EMA)を使った順張り手法として、移動平均線にある「支持線・抵抗線」としての機能を利用する方法があります。
上図を見ると、75本指数平滑移動平均線(EMA)が支持線となって、価格を押し上げているのが分かります。
ここでは、より深く理解してもらうために、移動平均線が支持線・抵抗線として機能する理由を解説します。
移動平均線が支持線・抵抗線として機能する理由
移動平均線は、一定期間の終値の平均が基本的な考え方になっています。
ローソク足の終値は、全ての市場参加者が売買を行った結果なので、市場参加者の平均売買価格を表しています。
例えば、20日移動平均線の場合は、過去20日間における平均売買価格を表していることになります。
ポジションを抱えていないトレーダーは、なるべくお得にポジションを持ちたいので、移動平均線に近いところで注文を入れようとします。
その結果、移動平均線が支持線・抵抗線のように機能します。
RSIを使った逆張り手法
移動平均線には、マグネットのように価格を引き付ける機能もあります。価格が移動平均線からどれくらい離れているかを表す指標を「乖離率」といいます。
移動平均線との乖離率を測るテクニカル指標として、
- 移動平均乖離率
- RSI
- 騰落レシオ
などが挙げられますが、ここではRSIを利用した逆張り手法について解説します。
チャートに中期から長期の指数平滑移動平均線(EMA)と、RSIを表示させます。
RSIが70%以上の時は相場が買われすぎの状態にあるとして、売りシグナルとなり、RSIが30%以下の時は相場が売られすぎの状態にあるとして、買いシグナルとなります。
価格が指数平滑移動平均線(EMA)から乖離したサインとしてRSIを利用し、RSIが70以上または30以下になったら、逆張りのエントリーを行います。
価格が指数平滑移動平均線(EMA)にタッチしたら、利益確定の決済を行います。
ここで紹介したような逆張りトレードは勝率は低いですが、うまくいった場合は、順張り以上のリスクリワードが期待できるという特徴があります。
指数平滑移動平均線(EMA)のメリット&デメリット
ここでは単純移動平均線(SMA)と比較した際の、指数平滑移動平均線(EMA)のメリットとデメリットについて解説していきます。
結論から言って、指数平滑移動平均線(EMA)のメリットとデメリットは表裏一体です。
指数平滑移動平均線(EMA)は相場の変化を早く捉えられるかわりに、ダマシが多いです。
指数平滑移動平均線(EMA)は単純移動平均線(SMA)や加重移動平均線(WMA)の改良版として紹介されることが多いですが、それは誤りです。
それぞれの移動平均線に「得意」と「不得意」な状況があることを覚えておきましょう。
≫テクニカル分析で活用されるトレンド系インジケーターとは?具体的な活用方法も解説!
まとめ
この記事では指数平滑移動平均線(EMA)について解説してきました。
本記事の要点は以下の3つです。
- 指数平滑移動平均線(EMA)は単純移動平均線(SMA)よりも直近の値動きを重要視したテクニカル指標
- 指数平滑移動平均線(EMA)は全ての終値を参照することができるテクニカル指標
- 指数平滑移動平均線(EMA)はダマシにあいやすいというデメリットもある