ドローダウンとは?許容すべき目安や抑える方法を解説
この記事では、ドローダウンの基本事項や目安について解説していきます。
自身のトレード戦略を分析する上で、「ドローダウン」は最も注目するべき指標といえるでしょう。
中には、自身の使用しているトレード手法のドローダウンを把握せずにトレードを行っている方もいるのではないでしょうか。
トレードを長期的に行っていれば、どんなベテラントレーダーであっても大きなドローダウンを経験するときが訪れます。
この記事では、ドローダウンに関する基本的な事項を説明したうえで、許容すべきドローダウンの数値や、ドローダウンを抑える方法を解説していきます。
- ドローダウンとは
- ドローダウンで注目すべき値
- ドローダウンの許容値
- ドローダウンを抑える方法
ドローダウンとは
ドローダウンとは、資産が最大値から右肩下がりに減少していく現象のことを指し、資産曲線の最大値から最小値までの下落率で表します。
例えばトレードの結果、資産が最大値の1000万円を記録した後、500万円にまで資産が落ち込んだとします。
この場合のドローダウンは、
(1,000万円-500万円)/1,000万円×100=50%
つまり50%ということになります。
ただし、これ以降のトレードで資産がさらに400万円にまで落ち込んだ場合、ドローダウンを以下のように再計算する必要があります。
(1,000万円-400万円)/1,000万円×100=60%
つまりこの一連のトレードのドローダウンは60%ということになります。
ドローダウンで注目すべき値
ドローダウンについて考えるとき、以下の3つの値について抑えておく必要があります。
- 最大ドローダウン
- 相対ドローダウン
- ドローダウン期間
最大ドローダウン
最大ドローダウンとは、資産曲線の中に存在するドローダウンの中で、ドローダウン額が最大のものを指します。
トレードの資産曲線では、複数回にわたってドローダウンが発生します。
例えば、上の資産曲線では2回のドローダウンが発生していると見ることができます。
ドローダウン#1では、資産が1000から400まで落ち込んでおり、ドローダウン額は-600で率に直せば、60%のドローダウンです。
ドローダウン#2では、資産が3000から1700まで落ち込んでおり、ドローダウン額は-1300で率に直せば、43%のドローダウンです。
最大ドローダウンは、ドローダウン額が大きい方を指すので、ドローダウン#2が最大ドローダウンとなります。
固定ロットなどの単利による資金管理を行っている場合は、最大ドローダウンに注目することが多いです。
相対ドローダウン
最大ドローダウンが金銭単位でのドローダウンであるのに対して、相対ドローダウンとは%単位のドローダウンを指し、多くの場合最大のものについて言います。
ドローダウン期間
ドローダウン期間とは、ドローダウンから抜け出すまでにかかった時間のことを指します。
上の資産曲線では、最大値の3000を再び更新するまでに、10日かかっているので、ドローダウン期間は10日です。
ドローダウン期間が長期にわたるほど、トレーダーのメンタルに与えるダメージは大きく、トレード手法を守り続けることが難しくなります。
ドローダウンの許容値
ドローダウンについて解説してきましたが、トレード手法のドローダウンはどれくらいのレベルに抑えればよいのでしょうか?
一般的にドローダウンの許容値は30%~40%と言われていますが、最終的にはトレーダー個人が許容できる数値を採用するべきです。
つまり、何%のドローダウンであれば、安心してトレードを続けることができるかを自問自答する必要があります。
トレードは否定的なフィードバックがたくさん生じる仕事です。
というのも、大部分の場合、ずっとドローダウンの状態になっているからです。私たちの経験では、70~90%の期間がそうした状態だと言えます。利益は短期間で急激に増えるだけなんです。
大半がドローダウンの状態ですから、そのドローダウンの時期を心理的にどう乗り切るかが問題になります。
マーケットの魔術師 システムトレーダー編
人によっては最大資産から50%のドローダウンがあっても、メンタル的にトレードを継続することが可能である一方で、20%のドローダウンであっても耐えられない人もいます。
ただトレーダーに共通して言えることは、人は思ったよりもドローダウンに耐えることができないということです。
本記事の執筆者である私はかつて、最大ドローダウン50%を許容するトレード戦略を採用していましたが、実際は30%のドローダウンを経験した時点でトレードを中止してしまいました。
またトレードにおいて大きな利益率を期待する場合、その分大きなドローダウンを覚悟しなければならないことも覚えておきましょう。
年間30%のリターンを望むなら、30%のドローダウン期間を覚悟した方がいい
伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術
ドローダウンを抑える方法
トレード手法のドローダウンはなるべく小さいに越したことはありません。
ここでは、トレード手法のドローダウンを抑える方法を3つ紹介していきます。
- 許容損失額を小さくする
- 資金管理法を変える
- ポートフォリオを組んでリスクを分散させる
許容損失額を小さくする
1つ目は、1回のトレード当たりの許容損失額を小さくすることです。
当然ではありますが、1回のトレードあたりのリスク額を小さくすれば、発生するドローダウンもそれだけ小さくなります。
連敗数 | 資金率2% | 資金率10% |
---|---|---|
0 | ¥10,000 | ¥10,000 |
1 | ¥9,800 | ¥9,000 |
2 | ¥9,604 | ¥8,100 |
3 | ¥9,412 | ¥7,290 |
4 | ¥9,224 | ¥6,561 |
5 | ¥9,039 | ¥5,905 |
6 | ¥8,858(ドローダウン率:11%) | ¥5,314(ドローダウン率:47%) |
上図は資金率2%と資金率10%で連敗時のドローダウンを比較した表になりますが、小さくリスクを取っている資金率2%の手法のほうが、ドローダウンを抑えることができています。
≫資金管理の2%ルールとは?利用するメリットや実践方法を解説!
資金管理法を変える
2つ目は資金管理法を変えることです。
トレードでは主に、
- 固定ロット
- マーチンゲール法
- 逆マーチンゲール法
*「固定ロット」とは、すべてのトレードで同じ量の注文を行なう資金管理法
*「マーチンゲール法」とは、トレードで負けるたびにトレード数量を倍に増やす資金管理法
*「逆マーチンゲール法」とは、トレードで勝てばトレード数量を増やし、負ければ減らす資金管理法
以上のような資金管理法があります。
ドローダウンが最も大きくなる資金管理法はマーチンゲール法ですが、その分大きな利益率を期待することができます。
逆にドローダウンを最も抑えることのできる資金管理法は逆マーチンゲール法です。
逆マーチンゲール法に則った資金管理法として有名なのが定率法ですが、定率法ではトレードに勝っても負けても、口座資金に対して定率のリスクを取っていきます。
≫逆マーチンゲール法とは?メリットやデメリット、実践のコツを徹底解説
つまり勝った次のトレードでは、前回のトレードよりも大きなリスクを取り、負けた次のトレードでは、前回のトレードよりも小さなリスクを取るように設計されています。
ただし、負ければ負けるほど取引数量が小さくなるので、逆マーチンゲール法を使うとドローダウン期間が長くなる傾向があります。
最大ドローダウン(相対ドローダウン)とドローダウン期間のどちらも改善することはできないので、トレーダーによって、どちらを重視するかは決めておく必要があります。
以上をまとめると、以下の表のようになります。
項目 | オススメの資金管理法 |
---|---|
最大ドローダウン(相対ドローダウン)の大きさ | マーチンゲール法 > 逆マーチンゲール法 |
ドローダウン期間の長さ | 逆マーチンゲール法 > マーチンゲール法 |
年間利益率の大きさ | マーチンゲール法 > 逆マーチンゲール法 |
ちなみに固定ロットは、マーチンゲール法と逆マーチンゲール法の中間程度のドローダウンリスクがあると言えます。
≫逆マーチンゲール法とは?メリットやデメリット、実践のコツを徹底解説
ポートフォリオを組んでリスクを分散させる
3つ目の方法は、ポートフォリオを組んでドローダウンを抑えることです。
相関の弱いトレード戦略を組み合わせてポートフォリオ運用をすることで、単一のトレード手法を運用するよりもドローダウンを抑えることができます。
ポートフォリオ形成を行う際は、
- 異なるトレード戦略どうしを組み合わせる
- 同一のトレード戦略を異なる通貨ペアに適用させたものを組み合わせる
- 同一のトレード戦略を異なる時間軸に適用させたものを組み合わせる
以上の3パターンを考えるとよいでしょう。
まとめ
この記事ではドローダウンについて解説してきました。
本記事の要点は以下の3つです。
- ドローダウンとは、資産曲線の最大値からの下落率のことを指す
- 一般的に個人のドローダウンの許容値は30%~40%とされているが、最終的には個人の許容値に依存する
- ドローダウンを抑えたい場合は、逆マーチンゲール法による資金管理を採用する