移動平均線のおすすめ設定を取引スタイル・手法別に紹介!注意点も解説
この記事では、テクニカル分析の1つである移動平均線の設定について解説していきます。
移動平均線とは、ある期間における相場価格の平均値を計算した結果を折れ線グラフで表したインジケーターです。
移動平均線の向きでトレンドを、相場価格との関係性で相対的な価格を把握でき、視覚的にも分かりやすいため、多くのトレーダーに利用されています。
「移動平均線を設定する意味はあるのか」
「おすすめの移動平均の設定を教えてほしい」
移動平均線は手軽に利用できるものの、その期間設定は自由であるため、移動平均線と聞くと上記のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
この記事では、移動平均線の設定について、移動平均線を設定するメリットやおすすめ設定などを、以下の8つの項目で詳しく解説していきます。
- 移動平均線とは?
- 移動平均線を設定するってどういう意味?
- 移動平均線の基本設定
- 移動平均線の設定をするメリット
- 取引スタイル別の移動平均線のおすすめ設定
- 移動平均線を設定する際の3つの注意点
- 自分なりの移動平均線の設定値を見つける方法
- まとめ
移動平均線とは?
移動平均線とは、一定期間の相場価格の平均を、折れ線グラフで表したインジケーターです。
移動平均線が上に向いている場合、上昇トレンドが確認できるなど視覚的に分かりやすくトレンドが把握できるため、多くのトレーダーがテクニカル分析で利用しています。
また移動平均線は、一定期間の相場価格の平均値を表しているため、現在価格との位置関係で現在の価格が割高か、割安なのかも確認できます。
≫【テクニカル分析】移動平均線とは?種類・活用法をわかりやすく解説
移動平均線の仕組み
移動平均線では、指定期間のローソク足の終値価格を合計し、指定期間で割ることで平均値を求めます。
例えば、5日間の相場の終値が以下のようになっている場合における5日移動平均線を考えてみましょう。
- 1日目:100円
- 2日目:110円
- 3日目:115円
- 4日目:125円
- 5日目:120円
上記の場合、平均値である114円が移動平均線を表す数値となります。
次に6日目の終値が130円であったとしましょう。その場合、2日目から6日目までの平均値である120円が移動平均線の数値になります。
このように、計算する日次を日々スライドして求められた数値を線で結んだグラフが移動平均線となります。
また移動平均線には、平均値の計算方法によって様々な種類の移動平均線が存在します。
上記のように単純に平均値を計算したものをSMA、直近の数値に重きをおいて平均値を計算したものをEMAといいます。
≫【テクニカル分析】単純移動平均線(SMA)とは?利用方法をわかりやすく徹底解説
≫【テクニカル分析】指数平滑移動平均線(EMA)の設定や利用方法をわかりやすく解説
移動平均線を設定するってどういう意味?
移動平均線は、ローソク足の平均値を計算する期間をどのように設定するかによって呼び方が異なります。
例えば、5本分のローソク足の平均値を表したものは「5日移動平均線」、100本分のローソク足の平均値を表したものは「100日移動平均線」などと呼ばれます。
このような5日や100日といった移動平均線の計算期間は自由に、そして簡単に設定が可能です。
ただし、移動平均線の期間について誤解しないように注意が必要です。5日移動平均線の「5日」は、5日分の平均ではなく、ローソク足5本分の平均という意味を表しているのです。
つまり1分足に5日移動平均線を適用する場合、ローソク足5本分である「5分間」の相場価格の平均値が移動平均線へ反映されます。
移動平均線の基本設定
移動平均線は、「短期移動平均線」「長期移動平均線」と設定期間の長さによって分類されます。また場合によっては、短期と長期の間である「中期移動平均線」も利用されます。
そしてそれぞれの移動平均線では、基本的に以下のような設定が利用されます。
- 短期:5日または20日
- 中期:75日または100日
- 長期:200日
上記のような移動平均線の設定は、相場の営業日を基にして決められています。1週間の営業日は5日、1か月の営業日は約20日であるため、利用されています。
5日移動平均線は1週間分の相場の営業日、20日移動平均線は約1か月分の営業日、200日移動平均線は約1年分の営業日に相当します。
基本設定が必ずしも正しいという訳ではないですが、相場の営業日をもとに移動平均線を設定してみるのもいいでしょう。
移動平均線の設定をするメリット
短期や中期、長期など移動平均線を異なる期間別に設定することには、分析や取引の精度を高められるというメリットがあります。
短期移動平均線は価格への反応が早いため、トレンドの変化を素早く捉えることができる特徴があります。
しかし移動平均線の向きが頻繁に切り替わるため、だましが発生しやすいというデメリットもあるのです。
そこで、より長い期間の移動平均線を設定・表示しておくことで、トレンドの正確な向きを把握するのに役立ちます。
取引スタイル別の移動平均線のおすすめ設定
短期トレードを行うのか、長期トレードを行うのかなど取引スタイルによって移動平均線の設定を変更することがオススメです。
ここでは。以下の3つの取引スタイル別にオススメ移動平均線の設定を紹介していきます。
- スキャルピングトレード
- デイトレード
- スイングトレード
移動平均線には必ず正しい設定はないですが、設定する際のポイントを参考にしてみてください。
スキャルピングトレード
スキャルピングトレードでは、5日や10日、20日などの短期移動平均線の表示がオススメです。
スキャルピングトレードでは、1分足や5分足のような非常に短い時間軸のチャートを利用して取引を行います。
また短期の値動きに対して瞬発的に判断しなければいけないため、移動平均線の期間を短く設定しておくことがオススメです。
デイトレード
デイトレードでは、5日や10日、20日などの短期移動平均線と、75日や100日などの中期移動平均線の表示がオススメです。
デイトレードは、スキャルピングほど短期的なトレードではありませんが、1日以内に取引を完結するために、短期間の相場を把握する必要があります。
その上、ポジションの保有時間が数時間と長くなる可能性もあるため、中期程度における相場の方向性も把握しておかなければいけません。
したがって、短期移動平均線で短期の相場状況を確認し、中期移動平均線である程度長い相場の方向性を確認しておくことがオススメなのです。
≫デイトレードは特に資金管理が重要!デイトレードで活用できる資金管理方法を紹介!
スイングトレード
スイングトレードでは、5日や10日、21日などの短期の移動平均線と、200日のような長期移動平均線の表示がオススメです。
スイングトレードは、日足や週足など、長期における時間軸のチャートを分析して相場の方向性や状況を把握する取引方法です。
日足や週足において中・長期の移動平均線を利用してしまうと、更新日時が数週間・数か月単位と時間がかかってしまうため、まず短期移動平均線で相場の方向性を把握します。
また1時間足や4時間足の中期足でエントリータイミングを図る際に、長期のトレンドがわかるように長期移動平均線を表示しておくとよいでしょう。
取引手法別の移動平均線のおすすめ設定
取引スタイル以外に、取引手法別でも移動平均線のおすすめ設定があります。
ここでは、移動平均線を使った以下2つの代表的な取引手法における、移動平均線のおすすめ設定について紹介していきます。
- ゴールクロス・デッドクロス
- グランビルの法則
ゴールクロス・デッドクロス
ゴールクロス・デッドクロスでは、5日や10日、21日などの短期移動平均線と、75日や100日のような中期移動平均線の表示がオススメです。
短期移動平均線が、中・長期移動平均線を上側に抜いて移動平均線が交差することを「ゴールデンクロス」、下側に抜いて交差することを「デッドクロス」といいます。
そしてゴールデンクロスの場合は買い、デッドクロスの場合は売りのサインとなります。
ゴールデンクロス・デッドクロスは相場の方向性だけでなく、トレンド転換やポジションの保有タイミングが分かるため、多くのトレーダーに利用される取引手法です。
ゴールデンクロス・デッドクロスの確認には、異なる期間に設定した移動平均線が必要です。したがって短期移動平均線と中期移動平均線を組み合わせるのがオススメです。
短期移動平均線と長期移動平均線、または中期移動平均線と長期移動平均線を組み合わせても機能しますが、売買サインの数が減ることには注意が必要です。
≫移動平均線のゴールデンクロスの発生条件や活用法を徹底解説!
≫【テクニカル分析】移動平均線のデッドクロスを徹底解説!
グランビルの法則
グランビルの法則では、200日移動平均線の表示がオススメです。
グランビルの法則とは、移動平均線と相場価格の位置関係や乖離率を見て、順張り・逆張りを行う取引手法です。
主に移動平均線の方向と相場価格の方向が一致した場合は順張り取引、移動平均線から価格が乖離した場合は、移動平均線に価格が回帰することを想定した逆張り取引を行います。
グランビルの法則における移動平均線の設定に決まりはありませんが、200日移動平均線を前提として作られた法則であるため、200日の表示がオススメです。
≫グランビルの法則を使った売買手法を紹介!うまく使いこなすためのコツも
移動平均線を設定する際の3つの注意点
移動平均線の設定を行う際は以下の3つの点に注意するようにしましょう。
- 移動平均線の設定をシンプルにする
- なるべく一般的な設定を利用する
- 設定期間を何度も変えない
それぞれについて詳しく解説していきます。
移動平均線の設定をシンプルにする
移動平均線の設定は、なるべくシンプルにしましょう。
一部のトレーダーは、たくさんの移動平均線を表示することで相場を正確に把握できると勘違いし、多くの移動平均線を表示してしまいます。
しかし多くの移動平均線が表示されていると、その分売買サインの数が増加し、正しい売買サインが見極められない原因となってしまいます。
テクニカル分析は視覚的に分かりやすいことがメリットであるため、移動平均線の表示もシンプルにし、多くても3つの表示に留めておきましょう。
最初の内は一般的な設定を利用する
なるべく最初のうちは、一般的な設定の移動平均線を利用するようにしましょう。一般的な設定とは「5、20、21、50、75、100、200」このあたりです。
移動平均線に限らず、インジケーターは多くのトレーダーが注目しているほど、セオリー通りに機能しやすいです。
したがって一般的でない設定を利用すると、セオリー通りに動く可能性は低くなり、売買サインの確度が下がってしまいます。
またセオリーを分かった上で一般的な設定のものを利用すると、セオリー通りに取引を行うトレーダーの心理を予測することもできます。
設定期間を何度も変えない
移動平均線の設定期間を自由気ままに何度も変えないようにしましょう。これは長期目線のトレードに慣れていない初心者トレーダーによくみられる行動です。
頻繁に設定期間を変え続けると、トレード手法の優位性を発揮することができません。トレード手法の優位性は長期的に運用してこそトレーダーの味方をしてくれるのです。
とはいえ、相場に合わせて移動平均線の設定期間を変更することは、いわゆる「最適化」と呼ばれる作業であり、長期的にトレード手法を運用する上では確かに必要なことです。
しかし、最適化の作業は一歩間違えれば、過剰最適化(カーブフィッティング)に陥ってしまうとても難しい作業です。
移動平均線の設定値を最適化する方法
ここでは、移動平均線の設定期間を最適化する方法を紹介します。
最も一般的な方法は、トレーディングソフトで最適化作業を行うことです。以下にその簡単な手順を紹介していきます。
まず異なる期間の移動平均線を組み合わせてバックテストを行い、過去のチャートにおけるパフォーマンスを評価します。例えば、移動平均線の期間を20から5期間ずつ(つまり、20,25,30…)変化させて、それぞれの設定期間が過去のチャート(例えば2016年から2018年)でどのようなパフォーマンスを出したかを記録するということです。
パフォーマンスの評価基準は、合計利益や利益率、ドローダウンなどを様々ですが、最終的な目標が利益を出すことであることから、合計利益や利益率が最適化の指標となることが多いです。
もし過去のチャートで満足できる成績を残せる移動平均線の期間が発見出来たら、それを最適化期間外でフォワードテストしてみます。
例えば、2016年から2018年のチャートでは45日移動平均線が最も高い合計利益を達成したとします。そしたら、次は最適化を行った期間(つまり2016年から2018年)以外の期間である2019年でフォワードテストを行うのです。
フォワードテストにおいても、バックテストと同程度の成績を残せるのであれば、その移動平均線の設定値は過剰最適化(カーブフィッティング)を起こしておらず、将来的にも安定した結果を残すと言えるでしょう。
まとめ
移動平均線の設定について、取引スタイル・手法別のオススメ設定から設定時の注意点に至るまで詳しく解説してきました。
移動平均線を取引の時間軸や取引手法に合わせて設定し、様々な移動平均線を組み合わせることは、取引の精度を高めるのに役立ちます。
また多くのトレーダーが利用する、一般的な設定の移動平均線を組み合わせることで、トレーダーの心理動向に関する予測もできます。
ただし、移動平均線の設定を頻繁に変えてしまうことは避けましょう。同じ設定の移動平均線を長期的に利用し続けて、特性やパターンを把握することが重要です。